地政学リスクの高まりやインフレによる影響もからみ、高値が続いていることで話題の「金」。
ニュースで耳にする機会も増え「金投資」に関心がある人も増えているのではないでしょうか。
-
- 興味はあるけど新NISAで買うことはできる?
- 聞いたことはあるけど具体的にはよく知らない
という人に金投資の方法、メリット、デメリットなどをお伝えしていきます。
中央銀行保有増も金価格上昇の流れを後押し
株は企業が倒産したら紙切れになりますが、金は「金そのもの」に価値があり、その価値は世界共通です。
よって世界のどこでも換金することができる資産です。
宝飾品としても加工できるその美しさはもちろんですが、金の価値を生み出している最大の要因は「希少性」です。
金は人工的に作り出すことができず、地球上に存在する金の量に限界がある=希少性が高いことが、金の価値を担保しています。
2003年に金ETFが登場し一気に残高を増やした背景も金価格の上昇に一定の影響を与えているようです。
また近年、分散投資の手段としての金に対する投資意欲が高まり、中央銀行も新興国を中心に米ドル依存の軽減を狙って金の保有量を増やす動きが広まっており、そのことも価格上昇の要因といえそうです。
地政学リスク、円安、インフレ等で金価格は動く
金価格は毎日変動しています。主な変動要因としては
-
- 受給と供給のバランス
- 原油等の資源価格
- 地政学リスク
- インフレ
などさまざまです。(そのほかにも要因はあります)
「金価格が上昇した」というニュースを耳にするのは、地政学リスクが高まり米ドルを回避するような動きがあるタイミングが多いです。
金は国際的に米ドル建てで取引されるため、日本円で金に投資する場合は対米ドルの為替相場の影響も受けることも理解しておきましょう。(基本的に金相場はドルが強くなると安くなり、ドルが弱くなると上がる傾向が強い)
有事の金、守りの資産といわれる理由
金は「有事の金」「守りの資産」などと呼ばれていますが、そのように表現されるのはなぜなのでしょうか。
有事の金という言葉が生まれたのは1970年代の米ソ冷戦時代とされています。
戦争による株価暴落などをおそれ、実物が残る金に注目されたのがきっかけ。それ以降有事の際は「資産の逃避先として金を買う」という意識が広まったといわれています。
経済的危機も有事とされますが、リーマンショック時の危機的状況でも金は買われる傾向にありました。
金相場の動き(NY金先物とS&P500の比較)をみてみましょう。
金相場も一時的には大きく下落する場面はありますが、S&P500より早い段階で回復していることがわかります。
注意!初心者が有事のタイミングで買うのは遅い
「有事の金」の投資家心理は根強く残っていますが、AI(人工知能)を駆使した取引売買が盛んに行われるなど現代のマーケットも変化しています。
有事の際に個人投資家が金を買おうと動いたときには、プロはひと足先にすでに動いており、売り時を狙っているものです。
よって、短期目線の投機的な買い方で金を購入することはおすすめではありません。
長期目線で、一部の資産を金として保管しておいたり、コツコツと少額で積み立てていく方法が初心者の人にはよいでしょう。
資産分散の選択肢の1つとして金投資はメリットあり
金に投資するメリットとしては、
- 通貨と異なり世界のどこでも同じ価値
- 現物として保有できる(金そのものに価値がある)
- 希少性の高さが価値を下支えしている
- 有事の際に強いといわれている
などがあげられます。
現金、株などとは異なる価値や値動きをする資産であるため、資産を分散する1つの選択肢として考えてもよいでしょう。
少額から投資できる商品もあるので、初心者の人でもはじめやすい点も魅力です。
税制面の話
ETFや投資信託などの証券口座を利用する取引であれば、特定口座を利用すると税金も自動的に処理されますが、金地金や純金積み立てを売却して利益が出た場合は確定申告が必要になります。
【金地金】
金の現物を保有している分には所得税はかかりません。
国税庁によると「金地金を売ったときの所得は、原則、譲渡所得として、給与所得など他の所得と合わせて総合課税の対象となります。」とあります
【純金積み立て】
基本的には金地金と同様ですが、取得価額の算出方法が異なります。(日々の購入単価の平均に基づく金額が取得価額となる)
金投資は盗難リスク、配当金がないデメリットも
デメリットもみていきましょう。
・現物は紛失や盗難リスクがある
・配当や利息がない
・ほかの現物資産と比べて資産価値が増えにくい(美術品、絵画等)
・円建て価格は対米ドルの為替影響を受ける
などがあげられます。
金投資の方法によっても特徴がそれぞれ異なりますので、下記の項目で詳しく説明しています。
金以外の貴金属投資は何がある?
ちなみに金以外の貴金属投資は
銀(シルバー) | 産業用途が半分ほど。宝飾品としても使用される。 |
プラチナ | 自動車の排ガスの触媒や電子部品など用途が多岐にわたる。 |
パラジウム | 産業用途メイン。自動車排ガス浄化装置、電子部品など。 |
などがあります。
新NISAで買えるものはある?金に投資する5つの方法
新NISAで金は購入できるのかも気になるところですよね。
結論からいうと、基本的にはできません。
NISAの投資対象商品は金融商品に限られており、現物商品投資である金は対象外となります。
しかし、金を投資対象としたETFや投資信託を活用すれば新NISAで保有することも可能です。
金に投資できる5つの方法について、それぞれみていきましょう。
金貨や金地金(じがね)の現物購入
金を現物購入するには、金貨や金地金を購入する方法があります。
・金貨(コイン)
メリット | 軽くて保管しやすい |
デメリット | コンパクトゆえに紛失・盗難リスクがある |
新NISA | × |
参考価格 | ウィーン金貨ハーモニーメイプルリーフ金貨 1/10オンス 31,723 円(税込2023/11/2 田中貴金属店頭小売価格参照) |
・金地金(インゴット)
メリット | 500g以上のインゴットの購入には手数料がかからない場合がある、まとまった資金で買う場合は◎ |
デメリット | 重い、保管に場所をとる(貸金庫などを利用すると手数料もかかる) |
新NISA | × |
参考価格 | 5g 55,055円(内税 2023/11/2日本マテリアル) |
金地金はシリアルナンバー(商品の管理番号)・商標(地金を製錬したメーカー)・重量表示・品位表示(金の純度)などが刻印されたものを選ぶようにしましょう。(本物を証明するもので将来買取査定に影響あり)
▶代表的な貴金属販売会社
田中貴金属
三菱マテリアル
日本マテリアル
インゴットカード
日本マテリアルが取り扱う商品で「インゴットカード」というものがあります。
・サイズ(インゴット) 14mm×9mm×0.6mm
・サイズ(カード)10cm×6.5cm
・1g価格 16,500円~(税込 2023.11.6日時点)
結婚祝い、出産祝い、誕生日プレゼントなど様々な用途に利用できるバリエーションがあります。
写真を入れることができるものも。
「金をギフトする」というのも素敵です。
純金積立
金を一定金額で毎月積立購入していく方法です。
積立てた金は現物交換することも可能。(別途諸費用あり)
毎月数千円から金に投資することができる手軽な方法です。保存場所にも困らないのもよいですね。
メリット | 少額から購入できる |
デメリット | 積立に手数料がかかる |
新NISA | × |
金ETF
ETF(上場投資信託)とは証券取引所に上場しており、取引時間内に株式同様リアルタイムで売買することができる投資信託の1種です。
その中でも金価格に連動することを目指して設計されているのが「金ETF」です。
金融商品になるため証券口座の開設が必要になります。商品によっては現物交換できるものも。(別途諸費用あり)
メリット | 1口から購入できるものが多い |
デメリット | 分配金がない、信託報酬などコストがかかる |
新NISA | ◎ |
◆NISA対象商品 NEXT FUNDS金価格連動型上場投信◆その他 金ETF 金の果実 SPDRゴールドシェア【GLD】 |
※すべての金ETFが対象になっているわけではありません。購入時に証券会社にてNISA対象商品かご確認ください。。現在投資信託協会にて順次組み入れ銘柄が追加されています。
金に投資する投資信託
投資信託にも金を投資対象とした商品もあります。
投資信託であれば100円から購入できる証券会社もあり、少額でスタートすることが可能です。
ETF同様、証券口座の開設が必要です。現物交換はできません。
メリット | 少額から購入可能、為替ヘッジありの商品も(ヘッジコストは必要) |
デメリット | 分配金がない、信託報酬などコストがかかる |
新NISA | ◎ |
◆NISA対象商品 ピクテゴールド ブラックロックゴールドファンド iシェアーズコールドインデックス |
※すべての金投資信託が対象になっているわけではありません。購入時に証券会社にてNISA対象商品かご確認ください。現在投資信託協会にて順次組み入れ銘柄が追加されています。
金の先物取引、CFD
先物取引やCFDは、少額でレバレッジをかけて大きなリターンを狙える投資方法です。
その反面、投資額以上の大きな損失を抱えるリスクがある商品で投資上級者向けの商品といえるでしょう。
先物取引、CFD取引いずれも金を対象とした取引を行うことは可能です。
それぞれの概要については以下のとおりです。
【先物取引】
・事前に決められている期日に特定の商品を決められた価格で売買することを約束する取引
・証拠金が必要
・少額にレバレッジをかけて大きな取引ができる反面、元手以上の大きな損失をこうむるリスクもある
【CFD】
・仕組みは先物取引とほとんど同じ。
・レバレッジの倍数や手数料、対象銘柄が異なります
メリット | 投資額以上のリターンを狙える |
デメリット | 元手以上の損失を被るリスクがある |
新NISA | × |
新NISAで金投資するならETFか投資信託
金投資について初心者向けに
- 金の変動要因、価格上昇の背景
- メリット、デメリット
- 金投資の5つの方法
などについてお伝えしてきました。
「有事の金」「守りの資産」という言葉がありますが、金への投資は値上がり益を狙うというよりも資産価値を守るという立ち位置で考えるとよさそうですね。
しかし、金投資はあくまでも「投資」であり、元本保証ではない点については理解しておくことが大切です。
資産分散の1つの選択肢として活用を検討してみてはいかがでしょうか。