定期預金金利が100倍に
三菱UFJ銀行など一部の大手銀行が定期預金の金利を引き上げたとして話題になっています。
三菱UFJ銀行は10年定期の金利を0.002%から100倍の0.2%に引き上げると発表。
それに追随するかたちで、三井住友銀行、みずほ銀行も同水準の引き上げを決定しました。
金利引き上げは約11年ぶり、そして【100倍】という数字が大きなインパクトがありニュースに。
なぜ久しぶりに金利を上げることになったのでしょうか?
低金利が続いていた理由は金融緩和政策
金利とは「お金の貸し借りに対する使用料のこと」をいいます。
預金
個人:銀行にお金を預ける(貸す)→銀行:預かったお金をもとに商売をする(融資など)
▶銀行は個人にお金の使用料として金利を払う(例 定期預金の金利)
住宅ローン
銀行:お金を融資する(貸す)→個人:家を買うために銀行からお金を借りる
▶個人は銀行からお金を借りて家を買う、その使用料として金利を払う(例 住宅ローンの金利)
低金利時代が長く続いてきた大きな理由は、日銀の金融緩和政策です。
1990年代のバブル崩壊後から続く不景気の対策として、金利を抑える政策が長く続いていました。(2008年リーマンショック、2011年東日本大震災と続き、2016年にはマイナス金利政策が導入されたことは記憶に新しいですね)
そのため、長らく低金利時代が続いていました。
金利引き上げの背景
今回の金利引き上げの背景には
①日本銀行が金融政策を緩和したこと
②アメリカの長期金利が上昇し続けていること
があげられます。
①については、日銀はこれまで長期金利の上昇を「1%に厳格に抑える」としてきましたが、「1%めど」に変更。
長期金利が1%を超えてもある程度までは容認する方針となりました。
②については、米国では堅調な経済状況+原油価格上昇などによるインフレ懸念から長期金利が上昇傾向にあります。日本の長期金利もこれにつられる形で上がっているという背景があります。
抑え込んでも上がっていく長期金利の状況を、さらに無理に抑え込もうとすると市場にゆがみが生じるリスクもあるため、柔軟化にふみきったという流れです。
11年ぶりの高金利!個人向け国債
長期金利上昇を受け、同じく約11年ぶりの高金利で注目されている商品が「個人向け国債」です。
個人向け国債の基準金利は市場実勢利回りを基に計算されます。(変動10年ものは計算式異なる)
よって長期金利上昇の影響を個人向け国債の金利も受けているということになります。
個人向け国債とは
そもそも個人向け国債とはどのような商品なのでしょうか?
◆個人向け国債とは(財務省HP説明引用)
・国が発行元
・元本割れなし
・0.05%最低金利保証
・1万円から購入可能
・中途換金可能(1年以上経過後から)※1年間は解約不可、解約すると元本割れするため注意。
・毎月発行(金融機関で毎月募集期間がある)
※中途換金調整額あり
変動金利型10年満期国債 | 実勢金利に応じて半年毎に適用利率が変わるため、受取利子が増えることもある。 |
---|---|
固定金利型5年満期国債 | 満期まで利率が変わらないので、発行した時点で投資結果を知ることができる。 |
固定金利型3年満期国債 | 満期まで利率が変わらないので、発行した時点で投資結果を知ることができる。 |
国がつぶれない限りは元本割れしないという商品です。(国が国債保有期間中はつぶれないと思えた場合は、安心感のある商品です。)
国がつぶれるリスクは現状低いため、預金のつぎにローリスク・ローリターンの商品です。(預金はいつでも引き出せるが国債は1年間の中途解約不可期間がある)
実勢金利を半年ごとに反映する変動10年ものは、現在のような金利上昇局面時には嬉しい商品性ですね。
使い道が決まっているお金、リスク商品が苦手な人におすすめ
たとえば、定期預金に預けている100万円。
「今すぐは使わないけど、このお金で3年後に車を買おうと思っている」場合。
お金の色分けを考えたときに、株や投資信託のような元本割れリスクのある商品にするのはNG。3年後元本割れしていた場合、予定していた車購入ができなくなるリスクがあります。
そういった「今すぐは使わないけど、数年後に使い道の決まっているお金」を国債として色分けするとよいでしょう。
万一必要になった際も1年経過後には中途解約も可能です。(※中途換金調整額発生)
資産運用初心者で価格の値動きする金融商品にどうしても抵抗があるという人も、1万円から始められるので第一歩としておすすめです。
たとえば、11月募集の個人向け国債の情報を元に比較してみましょう。
種類 |
金利試算(100万円に対して1年間の金利) ※税引前、福利は考えず計算 |
---|---|
個人向け国債3年(金利0.19%) | 1,900円/年 |
個人向け国債5年(金利0.42) | 4,200円/年 |
個人向け国債変動10年(金利0.60%) | 6,000円/年
※半年ごとに金利変動するため上がる場合も下がる場合もある(最低0.05%保証) |
10年定期(金利0.2%) | 2,000円/年 |
※2023年11月15日時点の三菱UFJ10年定期金利参照
※2023年11月7日~30日募集期間の個人向け国債金利参照
たとえば、10年預ける場合は定期よりも国債の方が金利がよいです。
10年定期は必要になった場合、いつでも解約可能ですが、期限前解約利率が適応となるケースがあり、この表では金利0.2%つかない場合もあることは理解しておきましょう。
個人向け国債の4つのデメリット
定期預金はいつでも解約できる、いつ解約しても元本割れすることはないという点が1つのメリットです。
そのため、近い将来必要なお金や緊急時にいつでも現金化できるお金を置いておく場所として適しているでしょう。
国債はあくまでも「金融商品」です。
そのため以下のようなデメリットが考えられます。
・国が破綻すると元本保証されない
・1年間は中途解約できないという縛りがある
・ローリスクのためローリターンである
・新NISA利用不可
3年5年10年と期間も選べるので、「〇年は使わないお金だな」と判断したうえで期間を選ぶとよいでしょう。
金利上昇でも安心できない!資産運用が必要な理由
長期金利上昇に伴い、定期預金・個人向け国債の金利が久しぶりに上がったという嬉しいニュースをお伝えしてきました。
「金利が上がっているなら、お金はこのまま定期預金に置いていてもいいのでは」と思う人もいるのでは。
しかし、それでも私たちには資産運用が必要です。それはなぜでしょうか。
100倍でも100万円預けて10年で2万円つかない
「定期預金金利が100倍に」と聞くとものすごくインパクトがありますが、実際に計算すると
今までの10年定期預金金利0.002%
100万円預けた場合:年20円/10年で200円
10年定期預金金利0.2%
100万円預けた場合:年200円/10年で2000円
※いずれも税引前の単純計算(福利効果は含まず算出しています)
今までが低すぎたためもちろん少し良くなったことは嬉しいですが、10年持っても2000円ほどしかつきません。
長期金利が上昇すると物価は下がるという原理がありますが、日本の現在の構造は別で物価はどんどん上昇しているのが現状です。
(さまざまなものを輸入に頼っている日本は円安の影響を大きく受けていることが背景。)
約10年ぶりに金利が上がったことが話題にはなっていますが、このままうなぎ上りに預金金利は上がっていくのでしょうか?
老後資金や将来のためのお金づくりとして、やはり預金だけに置いておくにはまだまだ金利のパワーが足りないと感じます。
長期金利が上がると住宅ローン金利も上がる
住宅ローン金利も長期金利上昇に影響を受けています。
住宅ローン金利は「短期プライムレート」「長期プライムレート」を基準に決定されます。
短期プライムレート・・・変動金利に影響
長期プライムレート・・・固定金利に影響
いずれも債券市場の金利情勢の影響を受けるため、長期金利上昇や金利先高観を受け住宅ローンの固定金利は上昇中、変動金利も上昇が予想されています。
すでに変動金利で住宅ローンを組んでいる人や、これからマイホーム購入を検討している人には特に気になる状況です。
住宅ローン金利が与える家計への影響も視野に入れて、負担をカバーできる資産管理を行う必要があります。
【新NISA】インフレに負けない資産作りが必要
インフレに負けない資産作りには、やはり資産運用の力が必要です。
株や投資信託、ETFなどの商品はインフレに強い資産です。
2024年から新たに始まる新NISAでは、投資信託や株式などの運用商品を保有することが可能。
お金の色分けの手段の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。
使い道の決まっているお金は定期or国債。将来の資産形成には新NISA活用も
定期預金金利上昇、個人向け国債金利上昇のニュースをもとに
・金利上昇の背景
・個人向け国債について
・資産運用の必要性
などについてお伝えしてきました。
まずはライフプランに沿ってお金の色分けをすることが大切です。
そのうえで、預金、国債、投資信託や株、どの商品にお金を振り分けていくかをじっくりと検討してみてはいかがでしょうか。